管工事とは？給排水・空調・衛生設備に関わる基本と施工管理のポイントをやさしく解説

建物の中で「水・空気・ガス」が安全かつ快適に使えるのは、見えない場所で緻密に設計された“管工事”が機能しているからです。

給排水や空調、衛生設備、さらにはガス配管など、生活インフラの要となる設備をつくり上げるのが管工事の役割です。しかし、専門用語も多く、「そもそも管工事とは？」「どんな設備を扱うのか？」と戸惑う場面も少なくありません。

本記事では、管工事の定義から、対象となる主要設備、施工の基本フロー、使用する図面、必要資格、現場管理で押さえるべきポイントまでを分かりやすく解説します。

さらに、工程管理・写真記録・報告作成を効率化できるクラウドツール「ミライ工事管理」の活用についても紹介し、現場で即役立つ知識をまとめます。

管工事とは？定義と対象となる主な設備

建設業法における管工事の定義

管工事とは、建物の内外で水・空気・ガスを安全に流すための設備を設置する工事を指します。建設業法では「給排水、暖房、冷房、通風、空気調和、浄化槽、ガスなどの設備の設置工事」と定義され、建物の“ライフライン”を支える重要な工種です。
出典：国土交通省3-13/pdf

住宅・商業施設・学校・工場など多くの建築物で必要となり、施工範囲が広いため専門的な知識と高度な管理が欠かせません。

 

 

主な対象設備

管工事で扱う設備は大きく4つに分類されます。

• 給排水設備：飲料水や生活用水を届け、使用後の水を排水・通気するための配管です。
• 空調・冷暖房設備：室内環境を快適に保つための冷媒配管・ダクト・熱源機器などで構成されます。
• ガス設備：調理・給湯・暖房などに使用するガスを安全に供給する配管です。
• 衛生設備：トイレ・洗面・浴室などの器具が機能するための配管で、建物の使い勝手に直結します。

これらは建物内の“見えないインフラ”であり、ひとつの不具合が漏水やガス漏れ、空調不良など重大トラブルにつながるため、精度の高い施工と安全性の確保が求められます。

（出典）国土交通省 業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方

​​管工事で扱う代表的な設備とは？

建物内で安全・快適な環境を維持するため、管工事では複数の設備を扱います。ここでは、「給排水設備」「空調・冷暖房設備」「衛生・ガス設備」の基本を簡潔に整理します。設備ごとに特徴が異なるため、全体像を把握しておくことが施工管理の基礎になります。

給排水設備

給排水設備は、建物で使う水を供給し、使用後の水を排水するための仕組みです。給水・給湯・排水・通気の各配管で構成され、水勾配や空気の流れを考えたルート設定が重要です。

誤差があると逆流・詰まり・漏水につながるため、精度の高い施工が求められます。建物用途や地域によっては給水圧の調整、保温材施工、凍結対策など条件が変わる点も特徴です。

空調・冷暖房設備

空調・冷暖房設備は、温度・湿度・空気の流れを整えるための設備です。主な構成は冷媒配管、ダクト、熱源機器などで、気密性やドレン排水勾配、吊り位置の精度が性能に直結します。天井内は他工種との干渉が多く、施工管理の難易度が高い領域でもあります。

衛生設備・ガス設備

衛生設備は、トイレ・洗面・浴室などの器具を正しく機能させるための設備です。器具取付位置や配管の立ち上がり精度が重要で、仕上げ工事との調整も多く発生します。ガス設備は、調理・給湯・暖房のためのガスを安全に供給する配管で、漏れ防止や気密試験、材料選定が重要です。医療ガス・厨房ガスなど用途別に専用配管が求められる場合もあります。

（出典）一般社団法人 日本建設業協会 関西支部 建築屋さんのための設備積算入門

管工事の施工の流れ

管工事は建物の用途や設備規模により細部は異なりますが、基本となる流れは共通しています。ここでは、計画から試験までの一般的なプロセスと、必要な図面・材料のポイントを整理します。

施工フロー

1. 配管計画
   機器構成や建物条件を踏まえ、配管ルート・寸法・勾配を検討します。他工種との干渉を早期に把握することが重要です。
2. 墨出し
   図面をもとに壁・床・天井へ取り付け位置や配管ラインを印す作業です。誤差は仕上がりのズレにつながるため、寸法精度が求められます。
3. 加工・接合
   配管を必要寸法に切断・加工し、素材に応じた方法で接合します（鋼管のねじ・溶接、銅管のろう付け、樹脂管の融着など）。接合強度と施工条件の理解が不可欠です。
4. 取付
   加工した配管を支持金具で固定し、機器と接続します。位置・高さ・支持間隔の管理がポイントで、他工事との同時進行による調整も多く発生します。
5. 試験（気密・水圧試験）
   配管に異常がないかを確認する工程です。仕上げ後の手戻りを防ぐため、最終確認として非常に重要です。

現場で使う主要図面

管工事では複数の図面を使い分けます。

• 系統図：設備全体のつながりを把握するための図。
• ルート図：フロアや天井裏の配管経路を示し、干渉チェックや墨出しに使用。
• 詳細図：機器周りや接続部の寸法を示す図で、誤差許容の少ない箇所で必須です。

図面を正しく読み、現場条件と適合させることが施工品質の土台になります。

使用する材料・配管種類

設備の用途・流体の種類に応じて配管材料が使い分けられます。

• 樹脂管：軽量で施工性が高く、給水・給湯など。
• 鋼管：強度が高く、ガス・消火・空調など。
• 銅管：耐久・加工性に優れ、冷媒・給湯向けなど。

特性と接合方法の理解が、事故防止と品質確保につながります。

（出典） 豊橋市建設部 建築課 機械設備工事設計マニュアル

現場管理で押さえるべきポイント

管工事の現場では、寸法精度・接合品質・他工種との調整が施工品質を左右します。ここでは、特に重要な3つの観点をまとめます。

墨出し精度と通り寸法の管理

配管ルートや器具位置は、墨出し段階での精度がそのまま仕上がりに反映されます。わずかなズレが排水勾配不良、器具の取付不可、仕上げ面との不整合につながるため、水平・垂直・勾配を丁寧に確認することが欠かせません。特に排水配管では勾配の誤差が直接トラブルに結びつくため、施工前後のチェックを繰り返すことが重要です。

接合品質と漏水・ガス漏れ試験の徹底

接合不良は漏水やガス漏れといった重大事故につながるため、材料ごとの接合方法（ねじ込み・溶接・ろう付け・融着など）を正しく使い分ける必要があります。支持金具の固定不足も振動やたわみの原因となるため、支持間隔の基準を守ることが求められます。施工後は水圧試験・気密試験などを実施し、仕上げ前に不具合を確実に発見することが手戻り防止につながります。

他工種との調整で干渉を避ける

天井内・壁内のスペースは限られており、配管・ダクト・ケーブルラックが交差しやすい環境です。事前の打合せや現場での取り合い確認を丁寧に行うことで、ルート変更や工期遅延を防げます。器具の取付高さやスペース確保など、建築・内装との整合も重要で、早期調整が施工全体の効率を高めます。

これらのポイントを意識することで、品質と安全性の高い管工事が実現します。

（参考）
国土交通省 公共建築工事標準仕様書（機械設備工事編）令和4年版
福岡市 建築設備工事の基準（電気・機械）

必要資格と関連制度について

管工事では、施工内容や工事規模に応じて専門資格が必要となる場合があります。ここでは代表的な資格と、その役割を整理します。

管工事施工管理技士（1級・2級）

管工事の施工計画・工程管理・品質管理・安全管理を総合的に担当できる国家資格です。1級は大規模工事の主任技術者・監理技術者として配置でき、2級は中規模工事で主任技術者として従事できます。公共工事では、工事規模に応じて資格者の専任配置が求められることがあります。

給水装置工事主任技術者・排水設備工事責任技術者

給水・排水設備の工事では、自治体ごとに定められた資格者の配置が必要です。給水装置工事主任技術者は、水道事業者が指定する工事の技術管理を行う資格で、給水装置の取付・改造工事で必須となる場合があります。排水設備工事責任技術者は、排水設備の施工・申請・検査に関わる業務を担当します。

有資格者が必要となる工事範囲の考え方

資格が必要かどうかは、工事の種類・規模・自治体の指定制度によって異なります。給水・排水の接続工事、ガス設備の工事、公共工事の主任技術者配置など、資格者がいないと工事を実施できないケースもあります。工事前に発注者や自治体の基準を確認し、必要な資格条件を満たしているかチェックすることが重要です。

（出典）
建設業法 7条・15条・26条
国土交通省 配置技術者となり得る国家資格等一覧

クラウドを活用して管工事の管理を効率化しよう

管工事は工程・写真・材料管理など多くの業務が並行して進むため、情報が分散すると抜け漏れや共有遅延が起こりやすい工種です。複雑な現場ほど状況把握が難しく、管理者の負担が大きくなります。

工程・写真・材料管理の課題

配管ルートや機器取付は他工種と密接に関わるため、工程調整が遅れると現場全体の進行に影響します。また、溶接状況や支持金具、試験結果など写真記録が多く、撮影後の整理が負担になりがちです。材料の種類が多いことも管理の複雑さにつながり、数量や搬入状況の把握に時間がかかるケースもあります。

ミライ工事管理で効率化できること

こうした課題に対し、クラウド型の施工管理ツールを使うことで、現場と事務所の情報共有がスムーズになります。ミライ工事管理では、工程表の作成・更新、写真の自動整理、帳票出力などをクラウド上で一元化でき、現場で記録した情報をすぐ共有できます。日々の管理の標準化が進み、協力会社との連携も取りやすくなります。

写真を撮影すると工種や日付ごとに自動整理されるため、台帳作成の手間が大幅に削減されます。工程変更もリアルタイムで共有でき、他工種との調整がスムーズになります。試験記録や材料確認もクラウドで管理できるため、書類作成や確認作業の負担を軽減できます。結果として、施工品質を確保しながら、現場管理にかかる時間を効率化できます。

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