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工事原価とは?仕訳・計算方法・原価管理の基本を徹底解説

2025年9月16日

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建設業では、売上は受注時点で確定することがほとんどです。そのため、利益を確保する工事原価の管理が不可欠です。しかし、建設業の会計構造は複雑で、理解しづらいと感じる方も多いでしょう。

そこでこの記事では、工事原価の定義・内訳・会計処理・計算方法から、実行予算・原価管理の効率化の方法までを詳しく解説します。

建設業における工事原価管理の重要性

 

工事原価とは?建設業における定義と内訳

工事原価とは、建設工事で「実際に発生した費用」の合計です。

企業の利益に影響する重要な指標で、以下の費用から構成されます。

  • 材料費(コンクリート・鉄筋・内装材など)
  • 労務費(現場作業員や技術者の人件費)
  • 外注費(専門工事や仮設工事の外部発注)
  • 機械損料(重機などの償却費)
  • 現場管理費(交通費・事務費など)

たとえば、1,000万円で請け負った建設工事に対し、800万円の費用が発生すれば、残りの200万円が「粗利益」となります。この”800万円の費用”を「工事原価」といいます。

建設工事の売上と工事原価による利益計算のモデル図

出典:国土交通省「公共建築工事積算基準(平成28年改定)」

 

工事原価と利益の関係

工事原価は、利益を計算する出発点となり、経営の健全性にも直結する重要な指標です。

企業の「売上」は、受注契約などで得られる収入を指しますが、「利益」はそこから工事原価などのコストを差し引いた後に残る金額です。

売上 - 費用(工事原価ほかのコスト) = 利益

工事原価が高くなればなるほど、売上が同じなら利益は圧迫されます)

 

簡易的な以下の損益モデルで見てみましょう。

項目 A社(原価大) B社(原価小)
売上 1,000万円 1,000万円
工事原価(コスト) 850万円 750万円
利益(粗利) 150万円 250万円

同じ売上でも、原価の把握と管理次第で利益に大きな差が生じます。

特に中小建設会社においては、現場ごとの工事原価が不明確なまま進行してしまうと「現場は忙しいのに、なぜか赤字」となり、工事原価の「見える化」が重要になるのです。

 

工事原価に含まれる費用一覧

工事原価に含まれる費用は、以下のように分類できます。

費用項目 内容
人件費(労務費) 現場作業員・職人・技術者の給与 日当・社会保険料・交通費など
材料費 工事に使う資材費用 コンクリート・鉄筋・木材・タイルなど
外注費 他社に発注した専門工事費 電気工事・足場工事・基礎工事など
機械損料 重機・車両などの減価償却費 クレーン・ショベルカー・ミキサー車など
現場管理費 現場運営にかかる費用 仮設トイレ・警備・通信費・事務用品など

参考:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」

たとえば「工事を外部の協力業者に委託する場合」は外注費に該当し、資材の発注・運搬などにかかる費用は材料費に分類されます。

工事原価には多様な費目が含まれるため、どの工種・工事に費用が発生しているかを把握することが、正確な原価管理に不可欠なのです。

 

工事原価・工事費・工事価格の違い

「工事原価」「工事費」「工事価格」は、どれも似たような用語に見えますが、建設業界で明確な意味の違いがあります。

誤った用語を使うと、利益計算や契約上のトラブルにつながることもあるため、以下の比較表で、明確な意味の違いをチェックして正しく使いましょう。

用語 定義 主な使われ方
工事原価  実際に工事でかかった費用(材料費・人件費など)  利益計算・原価管理
工事費 工事原価+現場管理費など(広義のコスト 見積書・契約書上の工事費明細 
工事価格 注文者と受注者の間で取り決めた契約金額 請負契約書、受注時の金額

大まかに捉えると、工事原価は「実際に使ったお金」、工事価格は「顧客に請求する金額」、そして工事費はその「中間的なコスト」と考えられます。

 

工事原価の構造を理解

建設業における「工事原価」は、現場で発生する費用と、会社全体の運営にかかる費用の両方で構成されています。その内訳は、以下のような階層構造になっています:

工事原価 = 純工事費(直接工事費+間接工事費)+ 一般管理費

このように、まず「純工事費」と「一般管理費」に分かれ、さらに純工事費は「直接工事費」と「間接工事費」に分類されます。
それぞれの費用がどのような性質を持ち、どこに関係しているかを理解することで、原価の見える化が進み、利益管理もしやすくなります。

 

直接工事費と間接工事費の違い

原価を「正しく分類・管理」して利益を守るには、直接工事費と間接工事費の違いを、ざっくりでも押さえておくと安心です。
ここで、その2つの違いを簡単に整理してみましょう。

区分 定義 主な例 経理処理の特徴
直接工事費  特定の工事や現場に直接関係する費用 材料費、労務費、外注費 工事ごとに配賦可能(実行予算に直結)
間接工事費 特定の工事ではなく、全体にかかる共通の費用  共通工具・仮設トイレ・現場事務所費  原則として、合理的な配分基準で按分

たとえば、現場Aで使う鉄筋は「直接工事費」ですが、全現場で使う共通トラックの燃料費は「間接工事費」になります

 

純工事費と一般管理費の違い

建設業における「純工事費」「一般管理費」は、どちらも工事原価に含まれる重要な費用です。以下に2つの違いを整理しました。

区分 定義 主な内容 工事との関連性
純工事費 工事現場で直接発生する費用 材料費、労務費、外注費、現場経費など 工事ごとに紐づく「直接費」中心
一般管理費  会社全体の運営にかかる共通費  本社人件費、事務所経費、営業・広報費など  特定の工事には直結しない「間接費」 

なお建設業では、工事原価を「純工事費+一般管理費」で構成するのが標準です。純工事費は「現場での直接的な支出」、一般管理費は「会社としての運営コスト」を表します。

 

完成工事原価の計算方法と仕訳の基本

ここまでで、工事原価の構造や費用の分類について整理してきました。
では、実際に「完成した工事の原価」はどのように計算されるのでしょうか?

建設業は、数ヶ月以上に及ぶ長期的な工事が前提となります。そのため、売上や原価を「工事進行基準」「完成基準」によって計上します。

参考として、完成基準を採用している場合には「完成工事原価」を次のように計算します。

完成工事原価 = 当期仕掛品期首残高 + 当期発生原価 − 当期仕掛品期末残高

例)期首残高100万円、当期原価900万円、期末残高200万円の場合

完成工事原価=100万円+900万円−200万円=800万円

この800万円が、実際に「完成した工事の原価」として、売上に対する利益の算出に使われます。

 

なぜ原価管理が重要なのか?建設業の利益構造から解説

建設業では、ひとつひとつの工事が会社の利益に直結します。だからこそ、しっかり原価管理をすることが、利益を生み出す力にも、会社を守る力にもつながります。

特に建設業は原価率が高く、案件ごとに規模や工期が大きく異なるため、現場ごとのコスト管理が利益を左右する重要なポイントになります。

ここでは原価管理の重要性を2つのポイントに分けてまとめました。

 

【理由1】原価が見えないと利益が残りにくい

工事原価が「見えない」状態では、現場でいくら働いても利益が残らない原因となります。

まず建設業は、受注時点で売上がほとんど確定するビジネスです。そのため、利益を守るには、原価を適切にコントロールすることが重要です。しかし現実には、以下のような問題が頻発します。

  • 見積段階では利益が出るはずだったのに、完工後に赤字になっていた
  • 人件費や外注費が想定以上にかかっていたことに、工事完了後に気づいた
  • 原価集計が月末・四半期末でしか確認できず、リアルタイムで判断できない

これらは原価が見えないことによって起こる問題です。利益を残すには、原価を見える化し、現場で素早く判断できる仕組みを整えることが大切です。

 

【理由2】経営者・現場監督・経理で原価感覚がずれる

工事原価は「部署間での認識のずれ」があると、いくら数値を集計しても、実態に合った原価管理はできません。

特に建設業では、関係者ごとに「原価」に対する感覚が異なるため、認識のズレが生じやすくなります。

立場 原価への視点 起こりやすい誤解
経営者 粗利・利益率の視点で見る  利益が出ていると思っていたのに… 
現場監督  実行予算・仕入価格で判断 予算通りなのに、なぜ問題に?
経理 会計処理ベースで評価 帳簿上は黒字なのに実感がない

同じ原価でも、部門ごとに視点が異なるため、判断や対応にズレが生じやすくなります。原価のズレを防ぐには、原価を見える化し、共通のフォーマットで情報を共有することが大切です

 

原価管理を効率化する方法|中小建設会社の課題と対策

建設業の原価管理を効率化するITツール導入のメリット

「工事管理でよく赤字が出てしまう」「工事原価をリアルタイムで見えるようにしたい」と考えているなら、ITツールの導入が不可欠です。

中小建設会社では、限られた人員や予算の中で原価管理を行う必要があるため、効率化はより重要な課題となります。

従来の建設業では、次のように「手書き」「Excel」で原価を管理しているケースが多くみられましたが、現場数・作業内容・発注者とのやり取りが増えるなかで、人に依存した管理では限界があります。

対して、工事原価の管理を含む施工全般の管理ができるITツールを導入すれば、次のような効率化を実現できます。

  • 実行予算の設定と原価実績の比較がリアルタイムで可能
  • 現場と本社で情報が一元化され、意思決定のスピードが向上
  • 記録・履歴が残るため、トラブル対応や会計監査にも強い

少子高齢化が進む建設業界において、ITツールは必須の存在です。工事原価の管理にとどまらず、現場全体の業務改善にも大きく貢献します。

 

ITツールで施工・原価管理を改善する方法

ITツールの導入を検討する際には、建設現場でよくある「施工管理全体」の課題にも着目すべきです。なかでも出面管理やスケジュール管理は、アナログな管理方法に限界があり、これらの管理が非効率になると、工事原価にも悪影響が生まれます。

工事原価は管理できていても、出面やスケジュールで課題があるなら、それらに対応したITツールの導入も有効です。

ミライ工事管理は、出面管理・スケジュール管理の両方に対応しています。無料から利用できるのはもちろん、有料プランも補助金対応であり低価格で運用できる現場アプリです。施工管理を効率化したい方は、まず無料相談をご活用ください。

ミライ工事管理アプリによる出面管理とスケジュール管理の画面例

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ミライ工事管理について詳しくチェックする

工事原価を正しく理解し、利益を守るためにできること

建設業は「売上よりも原価で儲けが決まる業種」です。どれだけ大きな工事を受注しても、原価管理ができていなければ、黒字のつもりが赤字になるリスクが常につきまといます。

そのため、工事原価は建設業の利益を守る重要なポイントです。単に集計するだけでなく、正しく理解し、組織全体で管理体制を築くことが不可欠ですので、ITツールを導入して管理を効率化してみてはいかがでしょうか。

ミライ工事管理の公式サイトはこちら

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